学校教育のデジタル化を進める国の「GIGAスクール構想」の取り組みが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて一気に加速しました。全国の大半の公立小中学校で、2020年度中に全児童生徒へPCあるいはタブレット端末が1人1台配布される見通しです。ここ岩手県でも全国最下位の端末普及率であったものが、一気に普及が進むことが期待されてます。
GIGAスクール構想により、教材や授業の進め方にも変化が求められていきます。
1.1人1台体制によって可能になるデジタルコンテンツを生かし、デジタル教科書・教材などを整備していく。
2.各教科で、どんな授業を進めるかICTを効果的に活用した学習活動のガイドラインを用意する。
3.AIドリルなどを作成し、授業のすみずみに先端技術を活用した環境を整備する。
単に形式だけに終わらない、ICTを生かした新しいコンセプトの授業のあり方が追求されています。
ICTを使いこなせる教師を育てる指導体制
ハード&ソフトが備わっても実際に教壇に立つ教師がICTを使いこなせなければ意味がありません。その観点から指導体制の強化も進められます。
1.各地域の指導者養成研修を実施する。
2.ICT活用教育アドバイザーを任命し、全国で説明会・ワークショップを開催する。
3.企業などの外部人材を、ICT支援員として活用する。
ハード、ソフト、そして教職員とあらゆる角度から教育のICT化を進めていく、強い意欲が示されています。
GIGAスクール構想により期待される効果
教室にパソコンやタブレット端末を持ち込むGIGAスクール構想により、どんな効果が期待されているのか?ここではGIGAスクール構想導入後の教育の変化をまとめます。
一斉学習から21世紀型の学習へ
これまでの学校の授業は、先生が黒板に板書して、子どもたちはそれを書き写すだけ。
手を上げて発表する子だけが授業して参加して、よくわからない子どもは取り残されて「お客さん」になっていました。
ネットワークと1人1台端末の環境があれば、先生はすべての子どもの回答をその場で確認し、習熟度をチェックしながら授業の速度などを調整したり、理解できている子どもが少ない場合には重点的な知識の補充もできます。
一斉学習から、だれも取り残されない21世紀型の学習へ、GIGAスクール構想の主眼点がここにあります。
もちろん、プログラミング教育にも役立つ
2020年から小学校のプログラミング教育が必修化されます。
そのなかで、パソコン、タブレット端末などの環境整備が遅れている事実が、保護者の不安材料の一つになってきました。
端末を使わない「アンプラグド学習」の推進などが期待されていますが、それでもやはり「プログラミング」を理解するには、端末にさわるのとさわらないのでは天と地ほどの差がありそうです。
GIGAスクール構想の実現は、プログラミング教育の効果の拡大への貢献度も期待されています。
工夫しだいであらゆる教科に役に立つ
社会・理科
もっとも効果を発揮しそうなのが「調べ学習」です。検索サイトやWeb情報の利用によって、これまでは図書館などで資料を引き写していた作業を、カット&ペースで利用でき、スピードアップと内容充実を両立できます。また、知的財産権に関する学習も、その過程で可能になります。
算数
計算問題を解いたら、リアルタイムで答え合わせができ、正しい考え方を学びなおせば「間違えたまま」でいる子どもの数を減らせます。
国語
端末上で作文・読書感想文などを作成しながら、タイピングまで学べます。また、ネットワーク機能を使って、子ども同士のディスカッションにも役立てられます。
図工・音楽
お絵かきソフト、簡易DTM(Desk Top Music)などにより、手先が不器用な子どもでも自由に創造できる環境を用意し、クリエーティブなマインドを育てられます。
体育
50m走や走り高跳びなど、体育の時間の記録を蓄積し、自分の成長を確認できます。また、ムービーで、すぐれたアスリートのフォームを研究して、個々の能力アップにも結びつきます。
工夫次第でいろいろなメリットが生まれてくるGIGAスクール構想は、まさにアイデア勝負の世界といえそうです。
GIGAスクール構想のデメリットとは?
一見するとメリットばかり.でも、使い方を間違えると、むしろ弊害が出てくると考える人もいます。ここではGIGAスクール構想のデメリットとリスクについてまとめてみます。
手書きのメリットがなくなる
過去の教室では学習内容を「くり返し手書きして記憶する」方法が「手間はかかるが、確実な学習」といわれていました。
授業からノートと鉛筆が失われたときに、この効果がなくならないかと心配されています。
とくに漢字学習をパソコン・タブレットは不可能ではないかと不安視する人もいます。
遊びと学習の境目があいまいになる
1人1台のパソコンやタブレット端末が使えるようになったら、子どもが勝手にゲームをインストールして休み時間にも遊びはじめるのではないかと心配する人もいます。
いろんなアプリのインストールによる端末のカスタマイジングがコンピュータリテラシーを高める大きな学習効果があるものです。
でも、その一方で、遊びと学習の境目が失われる危惧もあり、その対策が検討されてしかるべきだといえます。
SNSなどネットの危険を学べるか
Instagram、Tik Tokなど多くのSNSには年齢制限があり、13歳未満のアカウント登録は禁じられています。
1人1台のパソコンやタブレット端末を持つようになると、この禁を破って登録する子どもが続出するのではないかと心配する人もいます。
SNSには、さまざまな誘惑や危険も指摘されていて、保護者にとっては心配のタネはつきません。
また、家庭の方針で「中学生まではスマートフォンは持たせない」としている家の子どもにも自動的に端末が使えるようになってしまうジレンマも生まれてきそうです。
まとめ
こうしてみると、デメリットも多いかもしれませんが、今の子供たちが世の中に羽ばたく10年後、20年後を考えると、教育のICT化は避けては通れないものと言えそうです。